セラーの2階。
階段を上り彼家の台所にあるダイニングテーブルへ移動。

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初めに見せてくれたのは、スロヴェニア政府の認証機関 I.K.C.(Institut za Kontrolo in Certifikacijo)によるオーガニック生産者の認証書。
ワインの団体よりも、審査基準も手続きも大変だったそうです。
因みにイタリアのDOCにあたるスロヴェニアワインの呼称はZGPになります。

さて、いよいよ先程、ストック・ルームから持ち出したワインをテイスティング。
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Rebula 06
外観は少し赤みがかった淡い琥珀色。
口に含んだ瞬間から果実味が広がるが、残念ながら余り複雑さを感じず、スケール感は乏しく余韻もやや短い。
アルコール感は無く(11.5%と控えめ)飲み口が優しい分、クイクイ飲める。女性受けしそう。

Chardonnay 05
素晴らしい出来映え!
果実味と香りの爆弾。口に含んだ瞬間から一気に酸味と果実味が口蓋に弾ける。
ボリューム感もあり、酸の余韻も長い。
これがサルフォー(SO2)無しでボトリングされたものかと、ただただ驚嘆するばかり。

Sovignonasse 05
所謂、トカイ(Tokai/Tokaj)。
フリウリでは2007年以降は「トカイ」の名前が名乗れなくなり「フリウラーノ」「トカイ・フリウラーノ」となったが、
スロヴェニアでは2005年以降、名乗れなくなった。
2005年ヴィンテージから「ソヴィニョナッセ」と名乗ることになったムレチニックのトカイは、ピュアでとても優しい味わい。
青芝のブーケ、グレープフルーツとミネラルの香り。
中盤から徐々に酸味が増していき、ミネラル感とともに長く旨味を感じ、エレガントに消えていく。
以前、トカイの味わいの広がり方の特徴を「笹の葉の形状」に喩えたが、正にその通りの広がり方。
決して目鼻立ちのハッキリした味わいではなく、あくまでも純粋で柔らかなスタイル。
香りはシャルドネよりも強く感じた。

Merlot 05
残念ながら、複雑さに欠けているように思える。
正直言えば、やや水っぽいように思える。
ヴァルテルにも正直に伝えたが、その通りとのこと。
でも、これがナチュラリスト故のワインであり、
味わいの純粋さが失われているものではない。

Merlot 07
「まだ2年以上寝かさないとね。」と言いつつ、ストックの中から、ボトル熟成中のメルローを出してくれた。
果実味と酸味のバランスが良く、タンニンもとても細かく甘味を感じる。
中盤のボリューム感もあり、途切れのなく長い余韻。
05とは全く別物と思えるワイン。
ヴァルテルに言わせれば「これまでの会心の出来映え」とのこと。
その言葉の通り、本当に素晴らしい出来映えに感動した。

「よし、後は食事とともにテイスティングしてもらおう!」
と言うと、奥さんと相談をしながら電話でレストランを予約。
今日の晩御飯は、ここから車で30分位行ったところのレストランらしい。

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奥さんとは台所にあった erba cipollina (ワケギの一種)を始め、エストラゴン等、自家栽培のハーブの話で盛り上がり。

「ヴァルテル、もし良かったらBrda(ブルダ)の造り手、何件か紹介してくれない?」
うーん、と深く考えつつ、彼が「自信をもって推奨できる」造り手の連絡先を教えてくれました。
更に、スロヴェニアワインの造り手やレストランが載った観光マップまで頂いてしまった。
よし、次回は車でスロヴェニア観光し放題だ。

奥さんにシャッターをお願いして、ダイニングでヴァルテルと記念撮影。
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日は完全に沈み、車の通りの少ない高速道路を、ヴァルテルの運転で行くことに。
Vipava(ヴィパーバ)渓谷を通る高速道路は急勾配の連続。
その高速山道を、160km以上のスピードで飛ばす。
朝からワイナリーで散々飲み続けている上に、更にジェットコースターが30分以上も続くと、流石に酸っぱいものが上がってきます。
Vipava(ヴィパーバ)の出口で下り、山道を走ること10分。
到着したレストランの名前は「 Majerija (マイェリヤ)」。

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ヴァルテルの話によると、レストランの建物の一部は1700年に造られたという古い家屋を利用しており、
建物の権利者である奥さんが、レストランをやりたいという旦那の為にリフォームして提供したのだという。
店の駐車場では、ヴァルテルの知人の一人である地元の若い造り手が、我々の到着を待っていました。
彼は Slavcek (スラヴチェック)というカンティナの造り手。

「 Majerija (マイェリヤ)」の中に入ると、どう見てもワイン造りに従事しているであろう
ガタイの良いスロヴェニア人達が、ワインと料理に酔いしれています。Mlecnik1130
それにしても、彼らのヴァルテルを見つめる眼差しが、とても熱い。
そう、ここヴィパーバでは、彼はカリスマであり、憧れの存在。
僕とヴァルテル神が会話最中、同席した若い造り手君(Slavcek)は終始緊張しっぱなしで、ただただ汗を拭うばかり。
「神」+「将来を担う地元の造り手」+「謎の東洋人テイスター」のスリー・ショットは、否が応でも、店内の注目の的でした。
読者の皆さん、本当に信じられないでしょうけど、他のテーブルからヴァルテルを見る眼差しは、
まるでロックスターを見るかのような目なんですよ!!

テストしたワインは4本。
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・Rebura 2000 - Mlecnik
・Sauvignon 2003- Krapez
・Chardonnay 2000 - Sutor
・Merlot 2003 - Slavcek


1本目、ムレチニックのレブーラは、堂々の味わい。
秘蔵品として彼の家から持ってきただけあって、他の3本を圧倒する味わいでした。
他のどのワインよりもアルコール度数は低いものの、その複雑さやスケール感は比べものにならない程。
これはリゼルバを名乗っても良い品質だと思います。
その熟成感も素晴らしかったですが、他のワインにはない「フィネス」が、明らかに存在していました。
リコッタチーズ系の味わいの料理もあり、相性面でもこの日のリブーラは勝っていたと思います。

2本目、3本目は既に味わいの印象が薄れているのでコメントはしませんが、
特に2本目は、もろ樽化けした味わいだったと記憶しています。

4本目は、同席した地元の若者が造ったメルロー。
いかにも「有機ワインです」というような果実味が豊富ですが、あまりにマッチョで繊細さに欠ける味わい。
晩熟を思わせる残糖感があり、アルコール度の高い濃いワインで、個人的には好みの味わいではありませんでした。
ただ、こういうワインを高く評価する傾向が世の中にある事は、僕自身十分承知していています。

料理は、地元の伝統料理をスタイリッシュに仕上げたモノ。
季節のハーブや野菜のアレンジが実にユニークでした。

・栗のラヴィオリ、チポリーナ・ソース。erba cipollina (ワケギの一種)がいっぱい。
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・パプリカのラヴィオリ
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・牛のソテー、ポテトとグリンピース添え。
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食後は、この店名物のセラーを見学。
この店自慢のグラッパを飲みながら、ワイン談義。
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ご覧下さいませ、セラーの入口側にある 堂々のムレチニック・コーナーを。
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彼が、このヴィパーバで、どれ程の尊敬を得ている造り手が理解できると思います。
少なくとも、この店でセラーの棚を独占している造り手はいません。
91のChardonnay とReburaは、前の週にこの店に納品したばかりとのこと。
こんなお宝、ヴァルテルは持っていたんですね。

これは、同席したSlavcek(スラヴチェック)のワイン。
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一応、Slavcek は Mobia(モビア)や Denis Montanar(デニス・モンタナール)と同じ自然派団体 Triple "A" に所属する造り手です。

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ヴァルテルが、ここの造り手はいいよ、言っていた造り手。


記念撮影。身長171cmの僕が子供に見えますね。
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建物の間取りも机も食器も、お店のいたお客さんも、皆、大きかった。
スロヴェニア人は巨人の国なのかもしれません。