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安心と信頼の 、" よしお・Selection "
先月ワインの王様、バローロの飲み比べを主催した際、スターターに選んだ白ワインを飲んだ Krogo 妹様から、
「よしお・セレクツ、ヤバイっす」とお褒めのお言葉を頂戴しました。
以降、僕の名前がいつの間にやら「よしお」になっています。(ほんと、よしおって誰だよ?)
白ワインの聖地フリウリで舌を鍛えた神通力によるものなのか、
自分でも怖い位に、ここのところ秀逸な白ワインの引きが強くなっている気がする。

今回テーマに選んだ " Barbaresco " は、 " Barolo" よりも地質に砂質土壌が多く含まれているため、
エレガントな酸味が強く表れ、比較的早く飲み頃を迎える、と言われています。
以前、当ブログでも書きましたが、D.O.C.G. Barbaresco の 3大産地である " Barbaresco "" Neive "" Treiso " 、それぞれの特徴的な味わいの差をザックリと分けると、
バリック(小樽)熟成を行う生産者が多い " Barbaresco "
酸味が強く、ライムストーンの香りが強い " Treiso "
大樽による長期熟成を行うワインが多い" Neive "
ということになります。
しかし、そこは造り手の考え方やミクロクリマ、ヴィンテージ等、多くの可変要素によって、大きく異なるところ。
(だからこそ、何回飲んでも新たな発見があるわけですが...。)

今回は、3大産地全てのワインを飲み比べるよりも、「とりあえず、有名なワインを飲んで楽しんで(自慢して)もらおう」と考え、" Treiso " からのチョイスは無くし、その分、かなりのビッグ・ネームが多く並びました。
● Langhe Chardonnay Cadet 1997 - Bruno Rocca
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" Bruno Rocca "(ブルーノ・ロッカ)のセラーは Barbaresco 村の中心から南に5〜10分程度行った所にあります。
Barbaresco 最良と言われる" Rabaja "というクリュを持つ、バリックを効かせた現代的なワイン造りをする造り手。
実際ランゲ地方にはスケール感のある素晴しい白ワインが多い割には、赤ワインの影に隠れ、意外に見逃しがちなエリアでもあります。
Gaja (ガイヤ) の " Gaja & Rey " を始め Aldo Conterno (アルド・コンテルノ)の " Bussiador "
Bruno Giacosa (ブルーノ・ジャコーザ)の " Roero Arneis "
または、今回の Bruno Rocca (ブルーノ・ロッカ)の " Langhe Chardonnay Cadet "
そのご近所さんでもある Moccagatta (モッカガッタ) の " Langhe Chardonnay Buschet "
既に生産を中止してしまった Roberto Voerzio (ロベルト・ヴォエルツィオ)の " Langhe Chardonnay Fossati - Roscaleto " 等々、枚挙に暇がありません。

今回飲んだ Chardonnay Cadet 1997 は、未だ液面もキラキラしていて、シャルドネ特有の華やかな香りも健在。
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非常に恵まれた年だったせいか、酸の強さ、ミネラル感、ワイン自身の凝縮感は、まさに圧巻。
長期の瓶内熟成によって酸味にコクが生まれ、更にバリックによってもたらされるリッチな後味。
確かな満足感に舌鼓。 ワイン自体のコンディションも良く、今回の白ワインも素晴し過ぎました。

・・・当たり前のレベルが上がり過ぎ、今後の「よしおの会」の白ワイン選びが苦しい。


● Barbaresco Rabaja 2001 - Cascina Luisin
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このワインは、初めてランゲ地方を訪問した際、カンティーナで買った時の物。
" Cascina Luisin " のカンティーナは前述のワイン生産者 " Bruno Rocca " と Barbaresco 村の、丁度中間あたりにあります。
この" Cascina Luisin " の隣には、塀1枚を挟んで " Moccagatta " のセラーがあり、相続によって2分されるまでは一つの生産者でした。
" Moccagatta" はいち早く海外に目を向け、ワインに対してより現代的なアプローチをしているのに対し、" Cascina Luisin "は大樽(スラヴォニアン・オーク)を中心とした伝統的な造りを信条にしています。

実際この " Rabaja " は、既に飲み頃に入っていて、熟成香もタップリ。
そのくせ、内側からグングン伸びてきます。
Marcarini" Brunate " にも繋がる様な軽やかさもあり、個人的は好みの味わい。
このワインも非常にコンディションが良く(今年飲んだ中で5本の指に入るほどの状態の良さ)、改めて輸送品質の価値を思い知らされました。


● Barbaresco Riserva Santo Stefano di Neive 1998 - Bruno Giacosa
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「伝統的バルバレスコの頂点」と言われている " Bruno Giacosa " のリゼルヴァ。 通称「赤ラベル」。
" Bruno Giacosa " は、長期熟成可能と判断した良年のワインの一部をリゼルヴァ・クラスとして長期熟成させ、「赤ラベル」としてリリースしています。
Riserva Santo Stefano di Neive 1998 は、" Bruno Giacosa " がバルバレスコに所有する5つの畑において、唯一リゼルヴァにしたもの。

" Bruno Giacosa " には
Casa Vinicola Bruno Giacosa(カーサ・ヴィニコラ・ブルーノ・ジャコーザ)
 →長年契約している畑から購入したブドウで造るワイン
Az.Ag.Falletto di Bruno Giacosa(ファッレット・ディ・ブルーノ・ジャコーザ)
 →自社で所有する畑から収穫されたブドウで造るワイン

と2つのラインが存在し、本ワインは前者。
ジャコーザ家は祖父の代より何十年にも渡り、その品質を信頼しノー・チェックで破格の値段で買い続けている為、 " Bruno Giacosa " に葡萄を収めること自体、ワイン用葡萄生産者によってはステータスとされているらしい。
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写真では判りづらいが、" Cascina Luisin " とグラスを並べた所、外観の透明度は " Bruno Giacosa " が上回っており、グリップも強い。
飲んだ瞬間に、明らかな酒質の違いを実感しました。
喉が渇きそうな程に果実味が溢れ、口の中で複雑な香りが爆発しそう。
ランゲ特有の火打ち石のようなミネラル感や気品あふれる酸味は、別格の感あり。
さすが「赤ラベル」、文句なく今日一番のワイン。


● Barbaresco Asili 1978 - Ceretto
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バローロの「名門」チェレット家が所有している、バルバレスコで最も繊細、と言われる最高のクリュ " Asili " 畑のワイン。
Luca Roagna の元を訊ねた際、車で Asili の丘まで行き、 CerettoBruno Giacosa 、Roagna 、3社の畑の違いを観に行ったことが懐かしい。
78年は71年に匹敵する、と言われるほどに、70年代最良の年ですが、残念ながらワインのコンディションとしては、僕の期待水準には達していませんでした。(日本のトラットリアでは普通で出てくるレベルですが...)
鋭角的に表れる強い酸味は、後述の Gaja と比較するに当たり、大変良い教材。


● Barbaresco 1988 - GAJA
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無く子も黙る、「バルバレスコの帝王」アンジェロ・ガイヤのフラッグシップ・ワイン。
" Sori San Lorenzo "" Sori Tildin "" Costa Russi" 、という単一畑の高級 Barbaresco もあるが、これらは 4〜5% のバルベーラがブレンドされており、ガイヤの造るこの " Barbaresco " は、ガイヤ唯一の " D.O.C.G.Barbaresco " であり、唯一のネッビオーロ100%の Barbaresco 。
ガイヤ家が所有する13の区画の畑のブドウから造られており、それぞれの畑の個性とテロワールを生かし、緻密に計算してブレンドしているらしい。
そのレシピこそが「ガイヤ家」伝統の味わいであり、奥深さでもあります。

ランゲ地区において、いち早くテロワールを区分し、フランスでバリックの利用方法を学んだプロフィールや、特徴的な6cmのロングコルクばかり注目されていますが(実際、ガイヤ自身、そういうサイドストーリーを前面に出して、マーケティングしていたことも事実)、実はロータリーファーメンターや濃縮装置等の近代的な醸造設備を導入していないし、一次発酵から終始バリック熟成を行うような生産者ではありません。
(12カ月バリックで熟成した後、さらに大型のオーク樽で12カ月間熟成、その後、1〜2年の瓶熟を経てから出荷)

春にセラーを訪問し、アンジェロ氏と食事をしながら彼らの造るワインを飲みましたが、その時の印象としては、最高の葡萄を得る為に手段を選ばぬ豪腕カリスマ社長が、バリックを使って、とても「クラッシク」なワインを造っている、という感じでした。
アンジェロ本人も認めていましたが、アメリカ市場での成功が、今日のガイヤの成功のKey for Successとなったことは間違いなく、その事が結果的に「バリック臭の強い、ハイ・アルコールなワインである」という誤解や先入観を持たれてしまっているように思われます。
確かに日本での小売り価格を考えれば、ハンバーガーやバーベキューばかり食べているようなアメリカン・テイストと言われるようなワインを、1本数万円出して買いたくない気持ちは、もの凄く理解できます。 
でも、実際は違う。
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流石に22年経過すると枯れた味わいが楽しめるかと思いきや全く元気そのもので、色は紫色を帯びて色濃く、液面は艶々している。
非常にアロマティックなワインであり、旨味に溢れ、とてもゆったりとした飲み心地のするビッグなワインでした。 
個人的な感想を言えば、アンジェロと飲んだ 良年Sperss 1989 よりも、このバルバレスコの方が、果実味と酸味とのバランスに優れ、親しみやすさを感じました。