冴えない天気の火曜日の朝。 Sun Floriano del Collio (サン・フロリアーノ)から Localita Giasbana (ジャスバーナ通り)を通り、 Edi Keber (エディ・ケーベル)のセラーへと向かいました。
エディ・ケーベルのワインとの出会いは、初めてGorizia(ゴリツィア)を訪れた暑い夏の夜だったと記憶しています。
ゴリツィア市のチェントロを走るメインストリート Corso Italia(カルソ・イタリア通り)沿いにあるそのバールは、店の外にまで客が溢れる程繁盛していて、若い男女が少し大降りのグラスに注がれたキラキラと輝く白ワインを片手に、グラマラスな夜を謳歌していました。
カウンターの中央に置かれたボトルには、白いエチケッタにシンボリックな「K」の文字。
グレープフルーツや蜜の香りと個性的なミネラル感。 冷やしても失われることのない、ゆったりとした舌触り。
日中の強い日差しで熱を帯びた体には、これ以上にない最高の癒しの果実。
ゴリツィア市民に支持されるその造り手の名前を、僕は何度も聴き直しました。
トレ・ビッキエーリの常連でもあり素晴らしいワインの造り手であるエディ・ケーベルですが、実際のところは、「寡黙なワイン生産者」というよりも、「プロモーター的な立ち位置にいる造り手」のように思えます。
コルモンスのレストラン「Subida(スビダ)」のJosko Sirk (ヨシュコ・シルク)」氏と共に、
D.O.C.Collio(コッリオ)の振興に努めている事は、当ブログでも何度も紹介していますが、
地元の生産者が世界大戦後フランス産のバラエタル・ワインの氾濫によって苦境を味わった歴史的背景や、
2007年以降「トカイ」の名前が名乗れなくなった経験などから、所謂「外圧」に対して、エディ・ケーベルは大変な危機感を持っています。
例えば「バローロ」や「ブルネッロ」のように、もっと言えば「シャンパーニュ」のように、その土地の名前を聞くだけで誰もが一流のワインをイメージするような強いブランド力を、「D.O.C.Collio(コッリオ)」が一日でも早く身につける事が、地元の生産者達の生活を守る事に繋がると、エディは真剣に考えているのでしょう。
エディは、ヨシュコ・シルク同様に、自身の土地でアルベルゴを経営しており、ワインツーリズムにやってくる観光客に対して「宿」と「飲食」の両面から質の高いサービスを提供しています。
僕が訪問した朝、エディはアルベルゴの食堂で外国人の宿泊客と朝食をとっていました。
アルベルゴの前には、宿泊客がレンタルしている「Collio in Vespa」キャンペーンの黄色いバイクが停められていました。
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