ビオロジカルなワインを愛飲する方には、必ず覚えて頂きたい造り手です。
樽の魔術師にして、スロヴェニアン・ナチュラル・ワインの急先鋒、 Aleks Klinec (アレクス・クリネッチ) 。
※スロヴェニア語読みでは「クリネッツ」と発音します。
クリネッチのワインは3年前に、既にこのブログではお馴染みの店名である「 Alla Luna (アラ・ルナ) 」にて初体験。
それまでは『 コッリオのワインよりもスロヴェニアのワインは格下なんじゃないか ?! 』と勝手な思い込みをしていましたが、実際に飲んでみると、予想を遙かに上回る品質の高さに大いに驚かされました。
(国境が変わると文化がガラッと変わる、と思い込んでいるのは島国日本に住む人間の性かもしれませんね。)
Aleks Klinec (アレクス・クリネッチ) のセラーのある Medana (メダーナ) 村は、先日訪問した Edi Keber の家 (Zegla:ゼグラの丘) から、スロヴェニアの国境を越え、車で10分位行ったところにあります。
丘の上には小さな広場がありますが、僅かな商店と古びた教会くらいしかありません。
午前中に到着した時には、まるで『 大学堂 』のような移動式のパン屋が、大きなBGMを静かな村に轟かせていました。
偶然にも、パンを買いに来ていたお婆ちゃんの一人がアレクス・クリネッチのお母さん。
とてもフランクな方で、
『 メダーナに来たなら、当然、ウチでしょぉぉぉ! 』と言わんばかりに、僕が一言も発する前に、
「 クリネッチに来たのよね ? さ、さ、お入りなさいってば!! 」と、
そそくさと屋敷に迎え入れてくれました。
クリネッチのセラーは、この写真にある教会の真裏にありました。 (手前の黄色い建物がクリネッチ)
堂々と表札に謳っているように、クリネッチ家は1918年にメダーナに入植し、以降ワイン造りだけでなく、オリーブやイチジク、チェリー、モモを栽培収穫し生計を立ててきました。
現在は、Angiolino Maule (アンジョリーノ・マウレ) 氏が率いる自然派ワインの団体「 VinNatur (ヴィン・ナトゥール) 」に参加し、約5ヘクタールの畑で コッリオ/ブルダ ではお馴染みの品種、レブーラ、トカイ、ピノ・グリージョ、マルヴァジーアといった白ワインや、カベルネ・ソーヴィニョン、メルローといった国際品種のワインを、有機農法を用いて造っています。
特筆すべきは、単に原始的な葡萄栽培を行っているのではなく、近年その優位性が注目されている「 LYRA(リラ)方式 : 葡萄樹がY字型になるような仕立て。」で栽培したり、品種毎に異なる樽材の樽で熟成を行ったりと、かなり積極的な挑戦を試みています。
※フリウラーノ(トカイ)のみグイヨー仕立て。
因みに、現在 VinNatur (ヴィン・ナトゥール) には、114社のワイン生産者 (食品生産者も合わせれば123社) が国境を越えて加盟しています。
日本における有名処としては、誉れ高き Valentini (ヴァレンティーニ) に始まり、
Angiolino Maule (アンジョリーノ・マウレ) 氏の La Biancara (ラ・ビアンカーラ) 、
『 自然派シチリアの番長 』 Frank Cornelissen (フランク・コーネリッセン) 、
『 バルバレスコの野生児 』 Luca Roagna (ルカ・ロアーニャ) 、
何故か不気味なイラストばかりエチケッタにする Giardino (ジャルディーノ) 、
フリウリからは 『 イゾンツォのリアル・ジャイアン 』 こと Fulvio Bressan (フルヴィオ・ブレッサン) が推薦する I Clivi (イ・クリーヴィ) や、 Vogric の並びに新しくセラーを建てたばかりの Franco Terpin (フランコ・テルピン) といった、かなりの「濃い」面々が名を連ねています。
正に『 変態ワイン・ファン御用達 』の面々です。
更に、フランスからはアルザスの鬼才「 マルセル・ダイス 」と並び評される Gerard Schueller (ジェラール・シュレール) や 、ロワールの Sebastien Riffault (セバスチャン・リフォー) 、シャンパーニュの Simon-Selosse (ジャック・セロスの妹のドメーヌ) 、『オーストリア・ワインの改革者』 Sepp Moser (ゼップ・モーザー) 、 R.パーカーも注目している真因気鋭の造り手、カリフォルニアの A Donkey and Goat Winery (ドンキー&ゴート・ワイナリー :ふざけたような名前でもワインはとても真剣。) なんかも参加しています。
生憎アレクスは、この日ミラノに行く要件があり留守でしたが、前日に Varter Mlecnik (ヴァルテル・ムレチニック) が電話で僕が訪問することを伝えてくれていたようで、弟の Uros Klinec (ウロス・クリネッチ) がホストをしてくれました。
実際、ヴァルテルに「 ブルダで行くべきセラーは何処か 」と尋ねたところ、「 是非とも、クリネッチへは行くべきだ !! 」と強く勧めてくれました。
ねぐらから起きて来たウロスは、挨拶も早々にクリネッチの施設の中をガイドしてくれました。
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